第50話
「今度、担当する事になった子はね、桜優衣ちゃんって言うんだ。
すごくいい子。
果歩みたいな優しい子だよ」
暗い部屋で海人が小さく微笑む。
「でも・・・果歩にはなれない・・・。
星也には悪いけど、果歩・・・。
僕は果歩だけだから。
僕は果歩を忘れない・・・」
1人きりの部屋で海人が優衣の話をする。
「優衣ちゃん、本当は辛いのに、今日だけでも笑顔を沢山見せてくれたんだ。
本当はすごく不安なのに、笑ってくれるんだ。
支えなきゃいけないのは僕なのに。
僕の方が支えられてるような気持ちになる。
いつかあの子の笑顔が消えてしまうかと思うと、怖いよ。
果歩の時みたいに、あの子も突然・・・僕の前から消えちゃうんだ。
あんな気持ちはもう嫌だ・・・。
もう感じたくないあんな僕は・・・果歩だけでいい・・・」
海人の過去が脳裏に蘇る。
海人は過去から抜け出せない。
優衣は知らない海人の過去がある。
優衣には見せない海人のもう1つの顔。
海人は優衣には見せないよう、笑顔で優衣の前に存在しているのだ。
自分の気持ちを表には出さず。
優衣の前では笑って過ごそうと決めた。
それが、今の自分に出来る、唯一の事だから・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます