第48話

「・・・17歳になれるように、僕も支えるから、優衣ちゃん、落ち込まないで」


海人の声に、優衣は顔を上げる。


「笑ってるとね、病気も吹っ飛ぶんだよ。

科学的には立証されていないけど、人間にはナチュラルキラー細胞があって、笑顔になる事で病気を抑える事が出来るんだ」


海人の言葉に優衣は笑顔を見せる。


「そう、その笑顔が大事なお薬になるんだよ」


海人も一緒に笑ってくれた。


「もし、誕生日を迎えられたら、先生としてじゃなく、高村海人としてプレゼントをくれない?」


優衣は少し不安そうな表情を見せながら、海人の目を見上げる。


「高村海人として、優衣ちゃんに誕生日プレゼント?」


「うん」


「いいよ。何がいい?」


海人はノートとは別の手帳を机の上に出す。


自分のプライベートの手帳のようだった。


「海人先生の好きな物が欲しい」


海人は手帳に書き込もうとする手を止め、優衣を見る。


「僕の好きな物?」


「うん。海人先生の好きな物を私にちょうだい。

海人先生の好きな物、私もきっと好きだから。

だから、海人先生の好きな物をちょうだい!」


海人は頷き、何も書かないまま手帳をバッグの中に入れる。


「楽しみにしてる」


「そうだね。一緒に生きよう・・・」


「うん、悩んで暗くなっててもしょうがないもんね。

同じ時間なら、私も笑って過ごしたい。

神様が最後にくれたご褒美を自分が台無しにしたら駄目だよね」


「神様がくれたご褒美?」


海人が首を傾げる。


「うん。私にはご褒美なの。

だから、そのご褒美を無駄にしたくない。

最後まで笑顔で過ごしたい。

海人先生と一緒に笑顔で・・・」


優衣はそう言うと、砂時計を逆さにする。


砂がゆっくり落ちて行く。


まるで自分の残りの時間を知らせているように・・・。


「今日は特別。

今から1時間、2人の時間にしよう」


優衣は頷き「ありがとう」と砂時計を見つめた。

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