第38話

エレベーターで、売店のある1階まで降りた。


売店の前まで行くと、優衣はため息をついてしまった。


病院の売店とは思えない。


まるでコンビニのように広く、いろいろな商品がところ狭しと並べられている。


「すごい…。さすが、自由」と優衣は思わず笑ってしまった。


売店に入ると優衣は、リップクリームと髪を結ぶゴムを真っ先に手に取る。


目的の物はこの2つだったけれど、ついつい他の物にも目が行ってしまう。

雑誌やお菓子。


コンビニにいる感覚になり、優衣は自分が入院患者だと言う事を忘れそうになった。


けれど、売店のガラスに映った自分を見て思い出した。


病院の寝巻きを着て商品を見ている自分の姿が映っている。


「そっか。ここ、病院なんだ」

優衣は呟き、リップクリームとゴムだけを買い、エレベーターに戻る。


エレベーターの横の階段。


上って行く海人の背中を見付けた。


バスの中で見ていた後ろ姿だ。


優衣は微笑み、エレベーターのボタンから指を離し、階段へと向かう。


海人の後ろを着いて行く。


今までは着いて行けなかった背中。


後ろ姿を見つめ、海人に気づかれないように後ろを歩く。


海人は2階の病棟の廊下へ進んで行った。


さすがにその病棟までは入って行けず、優衣はそこから自分の病棟のある4階へと1人登って行く。

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