第31話

「あの…先生の下の名前って…」


「あっ、カイトです。

ウミのヒトって書いて、カイトって言います」


優衣は頷き「そうですか」と、また下を向いた。


「高村じゃなくて、海人って呼んでもいいですよ。

好きなように呼んでもらっていいですから」


優衣は黙ったまま頷く。


「じゃあ、桜さんの事は何て呼ぼうか?」


優衣はドキドキした。


だって、こんなに近くに自分のためだけに海人が存在しているのだから。


そんな海人が自分を何て呼ぼうか聞いている。


信じられなかった。

奇跡のように思えた。

いや、これはもう奇跡だ。


残り4ヶ月しかない人生へのプレゼントなのかも知れないとも思えた。


「優衣でいいです」

優衣は照れながら小さく言う。


「優衣ちゃん!」


倒れそうにった。


あの人が「優衣ちゃん」と呼んだのだから。


そんな優衣の気持ちを知らない海人は「カウンセリングの詳しい説明をしようか」と優衣に言う。


優衣も息を整え、真剣な顔で海人の説明を聞く。

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