第21話

そして、病院の外に出て、少し離れた場所で携帯の電源を入れた。


そのとたんに、母親から着信が飛び込む。


「大丈夫。4ヶ月だけだから」


優衣は自分に言い聞かせ、深呼吸をしてから電話に出た。


携帯から母親の声が飛び込んで来る。


「優衣!看護士さんから連絡もらったわよ。

…血液の異常って聞いたけど、本当に?本当に大丈夫なの?

本当は、本当はもっと大変な、大きな病気なんじゃないの?

お母さんを心配させないように…嘘ついてるんじゃない?

本当は違うなら、お母さんには本当の事を話して。

お母さん、今からそっちに行こうか?

仕事なら大丈夫だから。お父さんも心配してるのよ!

本当に大丈夫なの?」


優衣の返事を聞かずに母親は次々に聞いて来る。


「お母さん、大丈夫だから。

そんなに言われても返事が出来ないじゃん」

優衣は思わず笑ってしまう。


久しぶりに聞いた母親の声。

安心した。


母親の声を聞いているうちに自然と心が落ち着いた。


「優衣!何笑ってるの?

お母さん、心配してるんだから!

お父さんも仕事が手につかないのよ!」


「お母さん、本当に大丈夫だから。

ちょっと治るのに時間が掛かるみたいだけど、入院して薬でよくなるから。

心配しないで。…大丈夫だよ」


優衣の言葉に母親は安心したのか、母親は落ち着きを取り戻そうと深呼吸をする。


「そう…無理だけはしないでよ。いつでも電話していいんだからね。

仕事がひと段落したら、お父さんと一緒に会いに行くから。

絶対に無理しちゃ駄目よ。

分かったわね」


母親は必死で優衣を励ます。


言葉で励ます事しか、この距離を埋められない。


優衣にもそれは伝わっている。


病気だからではなく。


優衣は電話を切り、大きく息を吸った。


あと4ヶ月。


優衣は必死で生きると決意した。

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