第17話

左腕に痛みを感じ、優衣が目を覚ます。


どうやら病院のベッドの上らしい。


痛む左腕には点滴が打たれている。


「私…」

優衣がぼやける景色を見渡していると、「今、先生を呼びますからね」と白衣を着た女の人が言い、ドアを明け出て行った。


看護士さんだろう。


「気がつきましたか?」

そう言いながら1人の医師が入って来る。


「点滴をしているので落ち着いていると思いますが、このまま様子をみましょう」と医師は言い、看護士にカルテを手渡す。


「あの…私…」

ここに運ばれた記憶が残っていない。


「バスの中で発作を起こして運ばれたんですよ。

そのバスにたまたまこの病院に勤めてるカウンセラーが乗っていて、その人があなたを抱えて入って来たんですよ。

点滴が効いて今は痛みも治まってると思います。

僕は応急処置をしただけですから。

その点滴が終わったら、担当医から詳しく説明があると思います。

ご両親に来てもらう事は出来ますか?

担当医が心配していましたけど」


医師に言われ、優衣は首を横に振る。


優衣の父親は、京都で呉服店を営んでおり、今も京都で暖簾を守っている。


母親は、呉服店の手伝いをしながらも着付けの先生や、生け花教室、茶道教室の講師もしている。


高校に通うため、1人で上京して来た優衣は、忙しい両親を呼ぶ事を拒んだ。


その事を医師に告げた。


「分かりました。担当医には私から伝えておきます。

対応は担当医の判断になりますが…」


その後、担当医から返答があり、自分1人で説明を受ける事になった。

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