第10話

日曜日。


『もしかしたらカイトとの距離を縮められるかも知れない…』


萌に貸してもらったスーツを着て、優衣は紙に書かれた場所に向かっていた。


萌のスーツはピッタリサイズで、まるで自分のスーツかのように着心地が良かった。


ポケットの中に萌がお守りを入れていてくれた。


スーツを着て、ポケットにハンカチを入れようとした時に気が付いた。


ポケットの中に、新しいお守りとメッセージカードが入っていた。


メッセージカードには、【面接、がんばってね!優衣らしく笑顔で☆】と書かれている。


優衣の緊張していた顔に、笑顔が戻る。


そのお守りをポケットにしっかり入れ、優衣は面接会場へと向かう。


今日のバスに、あの人の姿も、カイトの姿もない。


当たり前なのだけど。


面接会場に着き、優衣は極度の緊張に襲われた。


『もしかしたらカイトとの距離を縮められるかも知れない』


優衣は他の人とは違う理由で緊張を感じている。


カイトの事を思うと、緊張せずにはいられない。


正直、バイトなんてどうでも良かった。


頭にはカイトの事ばかり。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る