第11話
「次の方、お入り下さい」
ついに優衣の順番が来た。
「失礼します」と緊張した声で優衣が部屋のドアをノックする。
優衣が部屋に入ると、優衣の前にバスで出会ったあの男の人だけが座っていた。
優衣は「あっ」とつい言ってしまい、慌てて「すみません」と深く頭を下げた。
「君の面接の担当は、僕がやらせて頂く事になりました。
すごい偶然ですね。よろしくお願いします」
男の人は、優衣の緊張を少しでも和らげようと、笑顔で面接を始めた。
バイトの面接は初めてで、しかも担当があの男の人になり、優衣の緊張は最後まで消えなかった。
けれど、あの男の人で良かったとも思えた。
この面接をきっかけに、もしかしたらバイトとは違う場所でカイトとの距離を縮められるかも知れないと思ったからだ。
優衣は包み隠す事無く、質問された事に答えた。
10分くらいの面接をし、「お疲れ様でした。合否は電話でお伝えします。あっ、これどうぞ」と男の人は最後に名刺を差し出した。
そこには難しい英語で表記されたプロジェクト名と、男の人の名前・連絡先が書かれている。
これだけでもこの面接を受けた意味があったと優衣は微笑んだ。
¨小原星也(コハラセイヤ)¨
それが男の人の名前だった。
優衣の面接は緊張のまま終わった。
手応えなんて、緊張で全然検討もつかない。
何も覚えてないに等しい。
優衣は帰りのバスの中、カイトに繋がるかも知れない名刺を見つめた。
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