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第14話
「じいさん早く笛吹いて呼び戻してよ!」
「そう焦らんでも……おっと……」
耳に聞き覚えのある声がして立ち上がる。白く舞っていた雪が晴れると、真っ赤な服を着た二人のサンタがいた。
「ナナ! どうしてここに……」
駆け寄ってくるフィンの姿に言葉がでなくて、涙が溢れてフィンに抱きついた。
確かにフィンがいることを確かめて、もう逃げられないようにしっかりと抱きついていると、あの温かい手で頭を撫でられる。
「今年もよく泣くね……泣き虫」
「フィンが悪いんじゃない!いつまでもプレゼント届けにこないから、取りに来たんだから」
文句を言ってフィンの顔を見ると嬉しそうに笑っていた。もう一度ギュッとフィンの胸に顔をうずめると笑い声が聞こえる。
「HO,HO,HO! こりゃ、驚いた。サンタの国までプレゼントを取りに来る子がいるとは……さっ、ブリクセンも戻ったようだし、邪魔者は消えるかな」
「ありがとうじいさん」
「えっ、本物のサンタさん?」
「クリスマスの奇跡は届いたようだね。それじゃ、メリークリスマス!!」
私に向かってウィンクするとブリクセンの引くソりに乗って行ってしまった。
銀の笛が鳴ったのってサンタさんのおかげだったのか――
「プレゼント貰ったのに、お礼を言い忘れちゃった」
飛んでいくソリを見送っているとフィンは何も言わず自分の家に戻っていく。
私は慌てて後を追ってフィンの顔を覗きこむと、唇を尖らせていた。
どうしたのだろう? 会えた嬉しさに忘れていたが、そんな顔をしたいのは私の方だ。
「フィン! なんで来てくれなかったの? 手紙だって返事してくれないし……」
「俺が行かなくても別のプレゼント届いたんだろ? ならいいじゃん」
「よくないよ! だって私が欲しかったのは……」
ここまでフィンを追ってきたけど、やっぱり迷惑だったのかと不安になってくる。
プレゼントと告白の返事をもらうのだと、勢いまかせにここまで来たが返事がNOだった場合を想定していない。
断られても家まで送ってもらわないと帰れなし、家に着くまで泣かない自信も最初からない。
すべてが、引き戻せない状況にさっそく壊れた涙腺が悲鳴をあげだした。
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