3
第15話
「ごめん……どうせ届けても意味がないと思ったんだ」
「なんでよ! 私すごく楽しみにしてたし、意味は……フィンには無くても私には大切な意味があったんだよ」
たとえ、届かなくても私の気持ちがフィンに伝わってくれればよかった。だから私なりに勇気を振り絞ってお願いしたのだ。
「ノルディン・フィンが欲しいなんて……俺の姿が見えなくなっていたら、意味ないだろう?! 目の前で泣いて名前を呼ばれても、何も届けられないなんて……怖くて」
フィンは俯いて両手に拳を作って震わせていた。私だけが怖かったんじゃないんだ。存在を認識してもらえなくなる方だって寂しいし、怖いことなんだ。
なんだか同じことで怖がってたのが可笑しくて笑うと、フィンは顔を上げて怪訝な表情を見せる。
「私は、もうフィンのこと見えなくならないと思う。だから怖くないよ」
「なんでそんなこと……」
「フィンのこと不思議に思ってたことは、すごく単純なことで不思議じゃなくなったの。目を開いて動いて確かめればよかったの。もし、フィンのことが見えなくなったら私はまたソリに飛び乗って見つけにくるから!」
小さなころは疑問なんて抱かなかった。けれど成長して疑問を抱いたら、考え動き確かめることが出来る。
目を瞑って見ないふりなんて大切な物を見逃しちゃう。
「ハッハッ! 本当に……さっきじいさんに言われたばっかりなのに、まだ目が開いてなかったみたいだ。俺も成長しないと見つけてもらえなくなっちゃうな」
私とフィンは顔を見合わせて笑った。フィンは私を抱き寄せると耳元で囁く。
「メリークリスマス。お届け物です。喜んでもらえた?」
「大満足です……あ、ありがとう! 私の届け物は喜んでもらえる?」
よくばりかもしれないけど、ちゃんとフィンの気持ちを聞けてよかった。
恋愛感情がなくても、好きだと言ってくれれば次のクリスマスまで笑顔でフィンを待てる。
「う~ん、まあまあかな」
「えっ!? やっぱり迷惑とか……」
不安と悲しい気持ちに目に涙が溜まり始めるとフィンの顔が近づいてきて震える唇にキスをした。
赤い顔で固まる私を見つめて満面の笑みで囁く。
「これで大満足。好きだよナナ」
「い、意地悪! でも……私も大好きだよフィン!」
私が今までで一番泣いたクリスマス。でも、悲しいとか寂しいからじゃなくて、嬉しくて泣いたクリスマス。
これから先もずっと私とフィンのクリスマスは続く。
真夜中に空飛ぶソリを見つけたら、それはサンタクロースではなく待ちきれずフィンに会いに行く私の姿かもしれない。
終わり
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます