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第11話
銀の笛を握る手も段々と感覚が無くなり、吐く息も温度を失っていく。
――クリスマスが終わってしまう
何度も時計を見て空を確認するが、空飛ぶソリは見つからない。
「13星45番ってどれよ! 私のプレゼントはいつ届くのよ!」
夜空に叫んでも声は闇に消えていくだけで、フィンは現れない。ただ、来ないだけじゃない不安が頭をよぎる。
――見えていないだけではないのか
本当はずっと隣にいて私の頭を悲しそうに撫でているのかもしれない。
「ねえ、いるの? どっちよ……」
今年は泣いてもフィンが涙を拭ってくれることも、慰めてもくれない。
私は銀の笛を首から外すと両手で包み夜空に祈る。
「サンタさん、クリスマスに奇跡をください!」
いくら吹いても鳴らなかった銀の笛を口に咥えて思いきっり息を吹き込んだ。
――ピィィィ
夜空に高く高く笛の音が響くと、月明かりに光る稲妻が夜空を駆けてくる。
「やった 鳴った。まだ会える!」
笛が鳴ったことも夜空を駆けるブリクセンの姿が見えたことに安心する。
――まだ見える! プレゼントは自分で取りに行く!
瞬きのうちにブリクセンがソリを引いて目の前で停車したが、肝心な人が乗ってない。
「メリークリスマス、ブリクセン! ねえフィンは? なんで誰も乗せてないの?」
ブリクセンは私に鼻をすり寄せて甘えるばかりで、答えなどくれない。
てっきりフィンが乗ってくると思ったのに――
ふわふわと浮かぶ空っぽのソリを見つめて意を決する。プレゼントをフィンの所まで取りに行けばいい。
私は部屋に入り、適当な紙にフィンからもらったペンで文を書くが、途中でインクが切れる。だが、文字は紙からフワフワと浮かび上がり、夜空に飛んでいく。
あの文字の行き着く先にはフィンがいる。
「ブリクセンあの文字を追って!」
私がソリに飛び乗ると、ブリクセンは前足を立ち上げて文字を追い夜空を駆けだした。
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