第7話

「あれ!? もう届いてる? 俺のところにちゃんと手紙が来てたはずなんだけどな……グリプの奴が手紙をぶちまけてたから混ざったのか?」





 ポケットから紙とペンを出して配達リストらしきものをチェックする。今度は私がクスクスと笑ってプレゼントを差し出す。





「これは、私からサンタさんへのプレゼントだよ」



「俺に? 吃驚した……届けるばっかりで、まさかプレゼントもらえるとは思ってなかった。ありがとう」





 お互いの包みを交換して中身を確認するが、私は彼の反応のほうが気になってしかたなかった。



 包みから出された手編みのマフラーを見て彼が固まってしまう。



 一生懸命編んだけど、手編みなんてやっぱり嫌だったかな。

 


 どうしようかと不安になっていると彼は満面の笑顔で私を抱きしめた。





「ありがとう! クリスマスなんて寒い中プレゼント配って大変なだけだと思ってたけど、プレゼントもらうとこんなに嬉しいもんなんだな」





 小さいころは自分から抱きついたりしてたけど、なんだか恥ずかしくて体が固まる。



 そんなこともお構いなしに彼は何度も力を籠めて抱きしめたあと、立ち上がってマフラーを自分の首に巻いた。





「温かいな! でも、ブリクセンとお揃いか……んっ? このS ってイニシャル?」



「サンタのSなんだけど……」



「あぁ、そうかサンタ・クロースが名前だと思ってるのか……それ、じいさんの名前なんだよ」





 帽子を取って頭を掻きながらベッドに座りなおし、首に巻いたマフラーをいじり複雑そうな顔をする。



 私は彼の名前がサンタじゃないことに吃驚して目を丸くさせていると、彼が溜息を吐いてから話す。





「サンタ・クロースは1代目のじいさん。世界中に一人でプレゼントを届けるなんて出来ないだろ? クリスマスは、じいさんの血族が総出で配ってるんだよ」



「でも、ずっとサンタさんて呼んでも返事してたじゃない」



「クリスマス限定の役職みたいなもんだよ……プレゼントもらえるなら名乗ればよかった」





 酷くショックを受けてるようだったが、私はそれ以上だ。いままで彼の名前を知らなかったんだから。





「本当の名前はなんていうの?」



「ノルディン・フィン」





 サンタのサの字もない名前。こんなことならイニシャルなんて入れなければよかったな。



 がっかりする私の頭をフィンが優しく撫でて笑う。





「ほら、俺もナナちゃんのプレゼント間違えて持ってきたことあったろ? だからこれでお相子。そうだ、俺からもプレゼントあげなきゃね」



「もう、もらったよ」



「あれはサンタから。俺からはこれを上げよう」





 ポケットからペンを取り出して私に差し出す。リストをチェックするのに使ってたやつだ。



 彼からの個人的なプレゼントだけど、使い掛けのペン――


 複雑な顔をして見ていると、それに気づいたフィンが説明する。




「ただのペンじゃないよ。それで手紙を書けば、クリスマス以外にも俺に直接手紙が届く」



「本当! それなら毎日手紙を書く!」



「そう? 俺は気が向いたら返事を書くよ」





 顔を赤くしてぶっきらぼうに答える彼は照れてるのかもしれない。



 クリスマス以外に彼との通信手段を手に入れたことが嬉しくて仕方なかった。





「彼に、フィンに近づけた気がして本当に嬉しかったんだよね」





ペンを月明かりに照らすと、残りわずかなペンのインク別れのカウントのようで胸を締め付ける。

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