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第3話
その次の年も約束通りに彼はやってきた。ただ、私は約束を守れずに起きていたけど。
起きていた私にやっぱり驚いてすごく困った顔をし、ちょっとした意地悪を言う。
「プレゼントあげないよ?」
「やだ! だって……サンタさんにどうしても会いたかったんだもん」
私はこの年のクリスマスもぐずぐずと泣いたっけ? プレゼントも貰ってソリで夜の散歩にまで付き合わせた。
本当に困らせてばかりいたな。それでも彼は私が笑顔になるまでちゃんと付き合ってくれ、帰りに「また来年」って帰って行った。
小学校に上がってクリスマスが近づくと、みんな口をそろえて言う。
「サンタなんていない」
小学校低学年まで私は、クリスマス間近には大泣きをして学校から帰っていた。
「サンタさんはいるもん! ナナ、ソリに乗せてもらって空飛んだもん!」
「ナナちゃんのうそつき!」
「夢の話でしょ?」
サンタは両親だという子達に何度も本物が毎年家に来て、ソリに乗せてもらって夜空を駆け抜けたと言っても信じてもらえなかったから。
だから、その年も彼が来たときに起きていてその話を聞かせた。
三度目になると、私が起きていても「今年もか……」と諦めたように笑って話に付き合ってくれた。
「そっか……その子達からは手紙も届いてないみたいだしなぁ」
「手紙を出したらサンタさん会いに行ってくれる?」
彼は腕を組んで難しい顔をした後、すごく悲しい笑顔で話す。
「サンタを信じてない子には俺は見えないよ」
「そ、そんなことないもん! サンタさんのことナナは見えるよ!」
「いつまでも、見えるといいね」
なんだか寂しそうな彼を見ていたら言い知れぬ不安に襲われ、その年のクリスマスも私は盛大に泣いた。
また私に笑顔が戻るまでソリに乗せてもらって夜空を走り「よく泣く子だね」と笑って彼は帰って行った。
この年に、初めて彼の姿を見ることが出来る子と出来ない子がいることを知ったが、幼い私は彼の話になんの疑問も抱かなかった。
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