第70話
持って来た結希の荷物を鞄に詰め、祥也が部屋から出て来る。
「もう終わった…帰る…?」と結希は小さく言い、祥也を見ている。
祥也は結希にその手を差し伸ばす。
「帰れない…帰るなんて出来ない!…帰れないーーー。」
大きく首を振り、結希は祥也の手を拒絶した。
「どうして!いつまでもこんな所にいたって仕方ないだろう!幸は…ここにはいない!」
祥也の言う通り、幸はあの日、結希に最期を見せた。ずっとこの小屋で一緒の時間を過ごしていると思っていた。
その幸はあの日、結希の前で命の終わりを告げていたのだ。
結希にしか分からない真実が残されている。
その事を祥也はまだ知らない。
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