第67話

この小屋で、結希の両親は命を落としていた。


「でも、どうして祥也が知ってるの?。私のパパとママの事…。」


両親のあまりにも残酷な姿を思い出しながら、結希は祥也を見る。


「俺、ずっと結希を見てたんだ。中学に入ってからずっと。

一目惚れだった。中2の時、結希と同じクラスになれて凄く嬉しかった。

あの日も結希を見てた…」

祥也が初めて結希と関わった日の事を語り出す。


その日の事を、結希も覚えている。


その日、給食で出されたサラダの中にリンゴが入っているのを結希は知っていた。


結希は、躊躇(ためら)い、箸を止めた。


リンゴの入ったサラダの他に食べれる物はあった。


祥也も、結希がリンゴが嫌いな事には気付いていた。


毎回、リンゴはもちろん、リンゴが入っている事が一目で分かると残していたからだ。


『今回も残すんだろうな。』

そう思って結希を見ていた。


いつもなら決して箸をつけない。


けれど、次の瞬間、リンゴを挟んだ箸先が結希の口の中へと運ばれた。


「嘘…。」

思わず祥也が声を出した瞬間、尋常じゃない苦しみに倒れ込む結希の姿に気付き、飛び出した。


すぐにリンゴが原因だと悟った祥也が結希の口からリンゴを取り出す。


「大丈夫?」と背中を摩る祥也。


結希は震える手で首から下げているロケットの中から薬を取り出し、飲み込んだ。


数分後、落ち着きを取り戻した結希の姿に、祥也が安堵の笑みを見せる。


これが祥也と結希、2人の始まりだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る