第61話

「結希…これで最後だ…。幸に会わせてーー。幸を呼んで…来てくれないか?」

「幸には会わないって約束でしょ?」

怒鳴るような口調で結希は言い、立ち上がり、祥也に背を向ける。


「幸に最後に会ったらもうここには来ない。約束だ。もう結希を苦しませない!」

結希の肩を掴み、結希を自分の方に向かせ、「ここに来るのも最後だ。」と祥也は強く頼み込んだ。


悩んだ末、「もうここには来ない」と言う祥也の言葉に、結希は頷いた。

「幸に会わせてくれる?」と祥也は幸のいる部屋のドア見つめ、小さく言う。

そのドアの前に行き、「呼んで来るから、待ってて。」と結希は部屋へ入った。

祥也はイスに座り、大きく息吸い込んだ。


『もう、ここには来ない。』

その言葉を胸に、祥也は今、必死で前へ進もうと動いている。


祥也は今から起きる事を記録しようと、キッチンに箱を置いた。

箱には小さな穴が開けてあり、中にはカメラが入っている。

そのカメラのボタンを祥也は押し、テーブルに戻った。

結希に気付かれないよう、祥也は隠しカメラを設置したのだ。


これから起こる全てを残す為にーーー。

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