*最後の2人-破壊-*

第60話

祥也は、それから何度も自宅と小屋を行き来する生活を繰り返した。


全ては結希の為に。


その中で、あれからたったの1度も結希は幸の姿を見せようとはしない。

それが結希、そして幸との約束だから。

けれど、祥也はこの日、その約束を破ろうと決意した。


そして、小屋のドアを強く叩いた。

何も言わず小屋のドアを開け、中に入れる結希の姿はいつもと変わらない。

ここの所、結希の顔色も良くなり、表情も豊かになって来ている。

きっと、幸との生活、祥也とのペースが安定して来たからだろう。

いつもの祥也なら、結希の側に座り、その姿を見守っている。

何も言わず、ただ結希の側で結希を見守っている。

けれど、今日の祥也は違った。


「結希、話があるんだ。どうしても確かめたい事がある。」

祥也の切り出しに、結希は黙ったまま祥也を見た。

「何?」と聞く事さえも怖くて、結希は祥也から目線を落としてしまう。

何も言わない結希に祥也は続けた。


「もうここに来るのはやめようって思ってる。」

祥也のその言葉に、結希が祥也を見る。

「このままこんな生活を続けていても何も変わらないんだ。もう俺も限界だと思う…。」

震える声で祥也は続けた。

「ここにはもう来ない。今日で終わりにする。俺も結希も……幸も…。」

「“幸も”ってどう言う事?幸も連れて帰るって事なの?」


“幸も”と言う言葉に、結希の動揺は大きくなり、祥也を強く見た。

「違う!もう…。もう止めて…結希。」と祥也は言い、うつむいた。


そして、祥也は最後の階段に足を踏み入れた。

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