第57話

「幸。祥也がお粥を作ってくれたの。食べて薬飲んで。」

結希はそっと幸の体を起こすと、体半分に幸の体を凭(もた)れさせ、お椀を手に持った。

ゆっくり祥也の作ったお粥が幸の口に入り、喉を通って行く。

「美味しい。」と微笑む幸の姿に、結希の顔にも笑みが戻る。

ゆっくり時間を掛け、お粥を食べ終えた幸に、「これ飲んでゆっくり休んで。きっと良くなるはずだから。」と水と薬を渡した。

結希から薬を受け取り、それを飲むと、幸は少し疲れたように横になり、「ありがと。ごめんね。心配掛けて。」と謝りゆっくり目を瞑(つぶ)る。

「私の事は気にしないで。じゃあ、ゆっくり休んで。何かあったら呼んでね。」

結希は幸の体に布団を掛け、幸の部屋を出た。


「幸…食べてくれた?」と不安そうに祥也が立ち上がり聞く。

結希はお椀を流しに置き、「幸は食べて薬飲んだから大丈夫。でも…私は残しちゃった。ごめんね。せっかく作ってくれたのに。」とイスに座り、テーブルに頭をつけ、深いため息をついた。

久しぶりに幸の笑顔を見て安心したのか結希に眠気が襲う。

ゆっくり眠って行く結希の体に毛布をそっと掛け、祥也は結希の寝顔を見つめた。

幸の事で疲れ切った結希の頬にそっと触れ、祥也は小屋を出た。

【また来ます】と書き置きを残し…。

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