*サヨナラへのカウントダウン*
第51話
小屋のドアを誰かがノックしている。
そのドアを開けようとドアノブをガチャガチャと何度も回している。
息を呑み、ノックの音が鳴り止まないドアを、幸はただただ見ている事しか出来ず、その身を隠すように小さくした。
「幸!開けて!」
結希の声だ。
ドアを叩いているのが結希だと分かると、幸は慌ててそのドアを開けた。
「結希。戻って来てくれたんだね!」
「ごめんね。今まで1人にして。ごめん。大丈夫だった?」
泣きじゃくりながら言う結希を力一杯抱き締め、幸は結希の頭を撫で、微笑んだ。
「私、もうどこにも行かないから。またここにいてもいい?」
涙で震える声で、結希の顔に不安の色が浮かぶ。
開いたままのドアを遠目に見ながら、「…祥也…」と幸がその名前を口にした。
祥也の存在を酷(ひど)く気にしているようだ。
「祥也がいくら私を連れ戻そうとしても、私はもうここを離れない。連れ戻されたとしても、またこうやって戻って来るから!幸といる、幸の側にいるって決めたの!側にいる…。死ぬまで…死んでも幸の側を離れない。だから幸!ここにいてもいいでしょ?」
幸の腕を掴み、涙でぐしゃぐしゃになりながら、幸への想いをぶつけた。
次の瞬間。
結希の口唇を幸の口唇が塞いだ。
幸の涙と結希の涙が一つになる。
『もう離れない。』
2人はそう強く誓い合った。
『このままずっと2人でいよう…。』
ただそれだけで良かった…。
ただそれだけなのに…。
2人の生活はもうすぐ消えてしまう…。
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