第48話
「帰るなら、結希も一緒だ。お前を1人、ここにおいて帰る事なんて出来ない。お前を連れて帰るんだ。」
結希の手を引く祥也の手には、更に強く力が込められ、その手を引いて行く。
「待って!分かったから放して!荷物だってあるんだから。分かったから入って来ないで!」
結希は力では勝てないと判断し、「分かったから…待ってて。入って来ないで。」と祥也の手を振り払い言い、ドアを閉めた。すぐに、幸のいる奥の部屋へと入って行く。
「帰ったの?」と聞く幸に首を横に振り、「私の友達が来たの。私のせいで、この場所が…。一緒じゃないと帰らないって言って利かないの…どうしよう。」と不安な表情で結希は幸の腕をギュっと掴んだ。
結希の手を幸は優しく握り、「今は帰った方がいい…。」と、その手をゆっくり放した。
「えっ…?どうして?また逢えなくなるなんて嫌だよ、私!」
「今は帰った方がいいんだ。このまま残って編に怪しまれたら、本当に今度こそ、もう二度と逢えなくなっちゃう。今は帰って、また必ずここに戻って来て!僕は結希を信じて、ここで結希の帰りを待ってるから。」
結希は「分かった。」と頷き、幸の言う通り、この生活を守る為、1度、自分の町へ戻る事を決めた。
祥也と電車に乗り、見慣れた街へ戻って行く。
「入れよ。」
結希から家の鍵を取り、ドアを開け、少し荒く祥也が言う。
『久しぶりの自分の家…。』
約1週間ぶりに帰って来た自分の家は、あまりにも静かだ。
“独りぼっち”が当たり前だった結希の家の中は孤独に包まれている。
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