第43話

どれくらい揺られただろう。

いくつ電車に乗り換え、どれほどの時間、歩いて来たのだろう。

もうすっかり暗くなり、携帯の明かりで地図を見ながら、町から外れた林の前出足を止めた。

地図はこの林の奥へと続いている。


『どこにいるの?』

林の奥へ足を進めて行く。

どれ程の時間、林の中を歩いただろうか。

やっと目の前に一つのログハウスのような造りの古びた小屋が現れた。


『ここだ!』

やっと幸の元へ辿り着き、結希はその小屋のドアを震える手でノックした。


『また幸に逢える…』


ノックの音が林に響き渡り、ピンと張り詰めた空気が一気に漂う。

あまりの緊張感に、結希を目眩が襲う。

立っているのもやっとで、ドアにもたれ掛かりそうになったその瞬間だ。

ドアが開いたと同時に「結希!」と誰かが結希の体に飛び込んで来た。


そのぬくもりは、忘れたくても忘れはしない、大好きなぬくもりだ。

「幸…!」

そのぬくもりに結希がその名前を叫ぶ。

一気に力が抜け、結希は幸に抱かれたまま、その場にへたり込んでしまう。


「結希…ごめん。本当にごめんね。…でも、来てくれたんだね…。」

「もうどこにも行かないで。もう私の前からいなくならないで。側にいて!」

結希のボロボロな姿に、幸は何度も頷き、その度に結希をきつく抱き締めた。


『僕はここにいるよ』と伝えようとしているかのように。

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