*手紙*

第42話

それから時間が過ぎた。

日々がただただ流れて行く。

幸と離れてしばらくが経ち、結希は登校も出来るようになった。


そして、幸と出逢う前の何も起きない起こらない日々に少しずつ戻って行く。

その中で、祥也と過ごし時間も前のような空気へと戻り始めていた。


この日も授業を終え、結希は自宅へと足を進める。

いつものように郵便受けを開け、届いている郵便物に目を通して行く。


その途中、結希はある一通の封筒に手を止めた。

明らかに他とは違い茶色の封筒で手紙が送られて来ている。

慌てて家の中に入り、結希はその封筒を開け、一気に中身を読んだ。


【突然、手紙を送った事、許して下さい。】

この一文から手紙は綴られていた。


読んで行く中で、結希の目から次々と涙が落ち、便箋の文字を滲ませて行く。

手紙を読み終わった時にはもう、結希はリュックサックの中へ適当に洋服を詰め込み、制服のまま家を飛び出していた。


あまりに急いだせいで、玄関に手紙を落としてしまった事にも気付かずに。



【突然、手紙を送った事、許して下さい。ファン会員の住所を見て手紙を送りました。背中の傷は大丈夫ですか?あんな傷を負わせるような事をしてしまって、本当にごめんなさい。今でも結希の事を思うてと心が痛むんだ。あんなに必死になってくれたのに。どんな痛みにも耐えてくれたのに。結希が許してくれるのなら、もう1度、結希に逢いたい。僕は今、ここにいます。許してくれるなら…来て欲しい。僕はここで結希が来るのを待っています。  幸】


この手紙と一緒に、ある場所の地図が書かれた紙が1枚、同封されていた。

結希は逸(はや)る気持ちの中、電車に乗りその場所へと向かって行く。

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