第34話
「血は止まったけど、感染症を引き起こすかも知れない。病院へ行こう。僕、ちゃんと説明するから。立てる?」
幸はそう言いながらクローゼットを開け、その中からYシャツを取り出し、「これ着て!」と結希に渡した。
「大丈夫。私なら大丈夫だから。落ち着いて。」
結希は幸から受け取ったYシャツを着ると、立ち上がり、病院へ行こうと準備をしている幸の手を止めるように掴んだ。
「でも!」
「大丈夫。病院には私が後で1人で行くから。落ち着いて。」
「じゃあ…待ってて。」
幸は部屋に置いていた自分の鞄の中からカプセルの薬を出し、「これ、鎮痛剤。これ飲んで。傷みも治まると思うから。」と結希に渡し、冷蔵庫から水を持って来た。
「ありがとう。」
結希は鎮痛剤を飲み、やっと大きく呼吸をした。
そんな結希のいじらしい姿に、幸の目が涙で滲む。
「泣かないで。」
こんな状況でも自分を心配し、微笑んでくれている結希の体を、幸は思わず抱き締めた。
「イタッ」と結希が不意の背中の傷みに声を出すと「ゴメン!」と幸は慌てて結希から離れ、背を向けた。
そんな幸の背中を今度は結希が抱き締める。
結希の温もりが震える幸の体を温かく包んで行く。
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