*結希と幸の真実(ほんとう)の再逢(さいかい)*

第28話

そして結希は、幸の所属事務所“Yearレコード”の本社の前に立っていた。


ドアを開け、ロビーの受け付けに立った。

「どのような御用件でしょうか?」と受け付け係が笑顔で結希に返す。

「あの…えっと…屋月幸さんに会いたいんです。」と結希が息も絶え絶えに言うと、「どちら様でしょうか?アポはお取りでょうか?」と受け付け係が笑顔で結希に返す。

「あの…えっと…屋月幸さんに会いたいんです。」と結希が息も絶え絶えに言うと、「どちら様でしょうか?アポはお取りですか?」と冷静に係員は続ける。

「もういいです。」

結希が諦め、別の場所を探しに行こうと受け付けに背を向けた時だ。

多くのカメラと報道陣に囲まれながら1人の男性がドアを入って来た。

ドアを抜けた瞬間、カメラや報道陣は警備員に止められ、外に出されて行く。

ドアが閉まる直前に、「屋月幸さんは大丈夫なんですか?」と声が聞こえて来た。

どうやら男性は、幸と関連のある人らしい。


「すみません!」

足早に去ろうとした男性の腕を引き止め、「おねがいがあるんです!」と結希はとっさにその場で土下座をしてしまっていた。


『幸に逢う為なら何だってする!』

そんな気持ちを胸に、「幸に逢わせて下さい。」と結希はその男性に頼み込んだ。

男性は慌てて結希を立たせ、「君は?」と聞く。

「私…私は夏本結希って言います。幸が路上で歌ってるのを聞いて、オーディションライブにも」

「君だったよたのか!分かった。一緒に来て!」

男性は掴んでいた結希の手を取り、今来たドアへと走り出した。


結希は、何がどうなったのか理解できないまま手を引かれ、男性と一緒にドアを抜け、カメラと報道陣の中を走って行く。


「乗って!」と言われ、結希は止まっていた車に乗り込んだ。


男性がハンドルを握り、車は幸のいる場所へと走り出した。


結希の心臓が、今にも破裂しそうなくらい早く脈打っている。


『待ってて幸!。今行くから!。』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る