*突然の最期*

第27話

次の日の朝、結希は制服に、スクールバッグを持ち家を出ようとする。

「あっ!そうそう。ペン!」と結希は、昨日買ったライブグッズのペンの事を思い出し、鞄の中のペンを探した。


けれど、いくら探しても、鞄の中身をひっくり返して見ても、ペンはどうしても1本しか入っていなかった。

「どこかに落として来ちゃったんだ。」

仕方なく諦め、出て来た1本のペンをスクールバッグに入れ、結希は登校する事にした。


「おはよう!」といつものように教室に入り、スクールバッグへ手を伸ばした結希に晴比が取り乱した様子で飛び込んで来た。

結希は晴比の背中を撫で、「どうしたの?」と顔を覗き込む。

「結希、昨日のライブ、行ったんだよね…」

由加里の声に、教室にいたクラスメート、ほぼ全員が結希を見る。

「行ったけど…どう言う事なの?」

晴比の手を引き、結希は自分の席に座る。

「晴比も落ち着いて。」ともう1人の友達の紗保(さほ)が晴比を席に座らせた。

「ねぇ、昨日のライブがどうかしたの?」

「これ見て。昨日のライブに麗香も来てたんでしょ?」

由加里が机の上に出した新聞の記事と写真に、結希は言葉も出なくなった。


【モデル 林麗香、突然の訃報。公認の仲でもあったはずの屋月幸との交際を苦にまさかの自殺!

死亡を確認!】

麗香がビルから飛び降り自殺をし、命を落としたと言うのだ。


「ここも見て。」と晴比は新聞の一文を差し、「麗香、幸と付き合ってなくて…それで…」とうつむいた。

晴比が差した一文には、【「私は皆さんにも そして幸くんにもウソをついてこれまで過ごして来ました。私は、幸くんの事を好きではありませんでした。皆様にも、そして誰よりも幸くんに合わせる顔がありません。本当にごめんなさい。もう生きて行けません。さようなら。」】と、麗香が残した遺書の内容が載せられていた。


『言わないって言ったのに…信じてくれなかったんだ…自殺だなんて…』


「幸…大丈夫かな?」

晴比の声に結希は立ち上がり、気付いたら教室を飛び出し、走り出していた。


『幸…幸の側にいてあげなくちゃ…。私が側にいてあげなきゃ!』


どこに行ったら幸に逢えるかなんて知るはずも、分かるはずもない。

けれど、結希は走っていた。

幸に逢いに行く為。

幸の側にいてあげる為に。

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