第20話

そして気付いた頃には、公園のベンチに座り、結希はボーっとしていた。


「私…どうしちゃったんだろう。」と公園に無意識のうちに走って来た自分に問う。

公園のベンチで頭を抱え、結希は重いため息をつくしかなかった。


ただ時間だけが流れて行く。

その中で、結希はどこにも行けず立ち止まってしまっていた。


「結希…」

その中で、自分の名前を呼ぶ声に、結希は目を開け、声のした方を見た。

そこには、制服姿の祥也が「まったく。」と言う表情でこっちを見て立っている。

「祥也!」

結希は立ち上がり、思わず祥也の胸に飛び込んだ。

そんな、今にも壊れてしまいそうな結希の体を祥也は壊してしまわないように、そっと優しく抱き締め、包んであげた。


まるで天使かのように優しく。


「でも、どうしてここに?」と結希は、祥也がこの時間にこの公園に来た事をふと不思議に思った。

すると祥也は携帯をポケットから出し、「中学の時のクラスメートが結希と同じクラスにいて、そいつが教えてくれたんだ。それで、結希が行きそうな場所を探して、ここに着いたって訳。」と結希に話した。

祥也は結希にとって本当に側にいてくれる存在だ。


それからと言うもの、週刊誌やワイドショーでは幸と麗香の話題が主に取り上げられ、2人は世間も“公認の仲”へと化して来た。


「あぁ。もうダメだ…。」

教室では、晴比が週刊誌を手に落ち込んでいる。

結希はあれから晴比と会話をしていない。

仲直りするきっかけを逃してしまっている。


そんな晴比に少し呆れながら「結婚した訳じゃないんだし、まだ破局する可能性だってあるでしょ?悩み過ぎだってば。」と由加里(ゆかり)が言う。

由加里は晴比が元々仲良くしている友達だ。


「あぁ。こんな事になるならチケット申し込むの、やっぱりやめれば良かったぁ。」

「申し込んだの?」

「だってぇ…初めてのライブなんだよ。」

晴比のその言葉にに、結希の胸に動揺が生まれた。

結希は幸のライブに行かない事を決め、申し込まなかった。

けれど、晴比の「初めてのライブ」と言う一言に酷く動揺してしまっている。

そんな自分の胸に気付き、結希は少し後悔してしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る