第18話
沢山のカメラ・報道陣の前で、フラッシュの光を浴び、幸が一礼をし、正面の席に座る。
初のライブの記者会見が今、始まった。
「デビューから約半年ですが、ライブへの意気込みは?」と幾つかの記者が問う。
「デビューする前は路上でライブをしていたので、もっと多くの方に聞いて頂けるのがとても嬉しいし、それと同じくらい楽しみにしています。ファンの方に満足してもらえるファーストライブにしたいと思って企画に僕自身も参加してライブの構成を考えて来たので、早くファンの方にその形を見てもらいたいです。」
「ライブの為に新曲を作ったって本当ですか?」
「はい。作りました。その曲は、ライブが終わった頃、発売する予定です。」
幸の言葉に結希は小さく「やった。」とガッツポーズをし、テレビの前で笑った。
「幸さんの曲は実体験なんですか?」と言う質問に「はい。」と返す幸。
幸の曲は彼女への気持ちや、愛をテーマにしてる事が多く、結希はなぜか心にざわつきを感じ、思わずため息をついた。
そして、このざわつきが何かを予知していた事に気付く時が来る事を結希自身もまだ気付いていなかった。
“その時”は今も確実に近付いていると言うのに …。
「衣装とかもデザインしたそうですが。」
「グッズも販売されるんですよね。」
「パンフレットは50ページもあると聞きましたが。」
一つ一つの質問に「はい。」と答えて行く幸。
そして遂に“その時”がやって来てしまう。
結希が予知していたざわつきの中、“その時”が胸をえぐって行く。
「最後に一つ、皆様にきちんとお伝えする事があります。」
そう言うと幸は立ち上がり、スーツのポケットの中から1枚の写真を出して見せた。
「この場をかりて、きちんと皆様にお伝えします。この写真に写っている女性、林麗香さんと将来を考えてお付き合いさせて頂いております。」
幸の思いもよらない突然の発表にフラッシュの嵐が起こり、記者から質問の嵐も激しく巻き起こる。
「相手の林麗香さんはモデルの方ですよね?」
「そうです。モデルの林麗香さんと先月からお付き合いさせて頂いてます。」
結希の中のざわつきは現実のものとなり、そしてざわつきの意を理解した。
全てが壊れた瞬間、そのざわつきが結希の中から消えて行く。
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