第8話
ファミレスでコーヒーを飲みながら幸を待った。
それから待つ事、2時間。
PM10:00。
辺りをキョロキョロし見渡しながら、ファミレスの扉を開け入って来る幸の姿が見えた。
「こっちこっち!」と立ち上がり、結希が幸を呼ぶ。
「ごめん!遅くなっちゃって。」
幸は結希の向かいの椅子に座った。
「ううん。あっ!それより、おめでとう。」
「ありがとう。本当に来てくれて嬉しかったよ。」
「来るよ!。だって、記念すべき1枚だもん。」
そう言うと結希は、鞄の中から、あの日買った幸のCDを出した。
「何でこの曲にしたの?」と結希はCDを見つめながら聞く。
幸は結希からCDを取り、CDを同じように見つめながら答えた。
「初めて君がCDを買ってくれて、ライブにも来てくれるって約束してくれて。
今日、この曲を歌えば、合格しそうな気がしたんだ。」
「そうなんだ。」
少し照れながら、結希は水に手を伸ばした。
幸は結希にCDを返し、「お腹空いたでしょ?。こんな時間まで待たせちゃって…ごめん!。何食べる?。おごるから好きなの言って。」とメニューを渡した。
「えっ!?。いいよ。私がおごるって!。」と言う結希に、「いいから。CDと今日のお礼させてよ。この曲で合格できたの、君のおかげなんだから。」と幸は言い、「すみませーん。」とウエイトレスを呼ぶ。
「ハンバーグステーキセット1つ。君は?」
結希は慌てて、メニューも見ずに「オムライス。」と答えていた。
戸惑い、うつむいていると「名前…。」と小さく幸が結希を見た。
「えっ?」
「名前…ずっと聞いてなくて…今更なんだけど…教えてもらってもいい?」
結希は思わず吹き出した後、「夏本結希です。」と姿勢を正す。
2人の前に、ハンバーグステーキセットとオムライスが運ばれた。
「おめでとう。」と結希が言う。
「ありがとう。」と幸が微笑む。
いつもより少し遅い夕飯を2人で笑いながら食べる。
いつもより温かく感じた。
温かかった。
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