*運命のオーディションライブ*

第7話

悪魔から解放されてから数日後。


遂に幸の運命の日となるオーディションライブの日がやって来た。


会場には大勢の観客と、数多くのレコード会社の社員が訪れている。


そんな中、遂にオーディションライブの幕が開いた。


そしてステージで数人の参加者が歌って行く中、結希の前に、待ちに待っていた幸が現れた。


あの日のギターを手に、幸は目を閉じた。


シーンと静まる会場。


そして、ギターの音と、幸の歌声が響き渡って行く。


『この歌…』


幸が歌っている歌。


それは、あの時、初めて結希が幸に会った時に歌っていた歌だった。


CDを500円で買い、何度も聴いている歌のはずなのに、涙が溢れた。


幸の後に3人の参加者が歌い、ライブは終了した。


そして、遂に合格者が発表される。


合格できるのはたった1人だけだ。


「発表します。」

アナウンスが流れた。


結希は両手を顔の前で強く握り締め、『お願い!』と祈った。


「合格者は…」


時間が長く感じられた。


「合格者は……屋月幸さんです!」


合格発表に、結希は思わずその場に座り込んだ。


見事、幸がオーディションに合格し、大手レコード会社【Yearレコード】と契約を結び、デビューへの道が約束されたのだ。


ライブも終わり、会場を出ようとすると、「すみません。」と係員が声を掛け、帰ろうとしている結希の足を止めた。


「あの、屋月さんが、あなたにメメを渡して欲しいとの事で。」


係員は結希に2つ折りにしてあるメモを渡して来た。

「すみません。ありがとうございます。」


結希は会場を出ると、すぐにメモを開いて見る。


【今日は来てくれてありがとう。必ず行くから、会場の近くにあるファミレス“Ring”で待ってて欲しい。】


モメにはそう書かれていた。


結希は、メモに書かれている“Ring”というファミレスで、幸を待つ事にした。


会いたかったから。


ただ、幸に会いたかった。

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