第4話

「大丈夫だってば。

そんなのすぐに飽きて日常に戻るから。

それに、いざとなったらさ…

俺がお前をもらってやるから!

てか、そろそろ俺にしろってば!」


夕方、結希からのメールを読み、ファミレスに連れ出し、こう言ってくれている少年。


結希の中学校の時からの友人、横里祥也(よこざとしょうや)だ。


祥也は結希とは別の高校に通い、たまにこうして結希と会う。


結希の事が好きで、会えば必ず1回は「俺にしろよ。」と言うのが祥也だ。


いつもはうんざりなのが、今日ばかりはこの言葉に救われる。


「そんなのすぐに飽きて日常に戻るから」


祥也の言葉は合っていた。


悪魔の手下はすぐに飽き、結希を解放した。


だが、手下がいなくなっても、悪魔がいなくなった訳ではない。


手下から解放された獲物を、悪魔は一人占めするようになった。


そしていつしか獲物はその場から逃げ出したくても逃げ出せなくなる。


《彼女》ではなく、《獲物》とされた結希は、たった1つ、この場から逃げ出す方法を見つけた。


【獲物を消せばいい】

たった1つの方法を。


【獲物を消す為】に、結希は無意識に自分が前に住んでいたマンションへと歩いていた。


もう涙さえも出て来ない。


マンションへ続く道の途中…


「独りでもいい」と言う声が聞こえ、足を止めた。


声のする方を見ると、1人の少年が、ギター片手に一生懸命に歌っていた。


結希の他に足を止める人はおろか、その歌声にさえも気付かない人ばかり。


そんな中で、その少年はただひたすら自分の声、歌をぶつけている。


そんな少年の姿に結希は心打たれ、少年の前に座り、その歌声を聴いていた。

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