*闇の中での出逢い*

第3話

「ごめん。

俺、部活に集中したいんだ。

もうすぐ大会だし。

大会が終わったら引退だし。」


この日、この一言で彼女の初恋が焼失した。


夏本結希(なつもとゆき)。

χ高校3年2組。

17歳。


失恋2日目。


それが彼女だ。


1年間の片想い。

《部活》に勝てず、この恋にピリオドを打った。


まだボーっとする頭を抱え、教室のドアを開ける。


教室、そこで《部活》を選んだかつての恋の相手が笑っている。


席に座ったその直後。

いろんな方向からの声が結希に刺さる。


「あの子、告ったらしいよ。」

「彼女いたの、知らなかったの?」

「部活に集中したいって理由で…」

「だって、勇人の彼女、マネージャーでしょ?なら、部活に集中したいってのも」

「嘘はついてないだろ?アハハーーー。」


最後の言葉に、結希は、《部活》を選んだ勇人の前に立った。


「どうして?」

今にも泣き出しそうな声で聞く。


勇人はどこか面倒臭そうに結希から目を逸らし、ため息ついでに「何が?」と聞き返す。


「どうして、皆が知ってんの?」

「マネージャーとの事なら」

「違う!…私が告……どうして…みん…」

涙の代わりに、言葉が消えた。


今までクラスメートだったはずが、この時、全員が悪魔の手下と化した。


結希は鞄を抱え、今来た道を泣きながら走って行く。


『皆知ってたんだ…マネージャーとの事も…私の事も…。

…知らなかったのは…私だけ…私1人だけ…。

独りだけ…独…』

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