第2話

中学生になっても、両親が亡くなった事故の記憶は戻らない。


ただ一つ変わった事がある。


あの事故以来、リンゴが食べられなくなっていた。


リンゴを少しでも口に入れたなら、その瞬間、結希は生死をさ迷うほどのアレルギーを引き起こすのだ。


あの事故以来、自分でも分からないが、リンゴが食べれなくなってしまっていた。


中学2年生の時。


給食で出たリンゴを食べ、結希はその場で苦しみ出した事がある。


その時、苦しんでいた結希の口からリンゴを取り出してくれたクラスメートがいた。


事故以来、人と距離を置いていた結希の心を開いたのが、この時のクラスメート、横里祥也(よこざとしょうや)だ。


祥也の存在は後にも大きくなってゆく。


高校に入学してからも結希の毎日は大きく変化する事はなかった。


そしていつしか【事故】の一言も結希の中から消えていた。


もはや、そんな事はどうでも良いと思うようになって来ていた。


その理由は、初恋をしたからだ。


初めて1人の男性を目で追っている自分。


少しでも一緒にいたいと思う自分。


そんな初めての自分に彼女は希望と不安で溢れていた。


そしてこの初恋が引き金となり、彼女の全てが変わって行ってしまう事を、恋する彼女はまだ知らずにいる。


この初恋が全ての歯車を狂わせて行く。


今、物語の引き金が音を立て、引かれてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る