*始点*
第1話
夏本結希(なつもとゆき)。
この物語の主役だ。
彼女に両親はいない。
彼女の叔母は、独り残された彼女を支えようと、手を差し伸べた。
けれど彼女はその手を振り払った。
両親を失った彼女に残されたもの。
それは、愛情でも同情でもない。
何でもない。
彼女に残されたのは、莫大な遺産だけだ。
その遺産で、彼女は若干12歳にして1人で生きて行く事を決めた。
12歳になってすぐのあの日、彼女は両親を亡くした。
【事故】の一言だけが彼女に与えられた。
彼女に両親を失った時の記憶は残っていない。
気が付くと、そこは病室らしく、真っ白いシーツと布団がキレイにひかれたベッドの上にいた。
手には点滴。
ベッドに寝かされた状態の自分がいる。
「結希ちゃん!大変だったわね。もう大丈夫よ。大丈夫だからね。」
目を覚ました瞬間、叔母が泣きながら頭を撫でて来た。
そして、抱きついて来た。
「ママとパパは?」
やっとの事で声が出た結希。
そんな結希の様子に、叔母は驚いた表情を見せる。
「覚えてないの?」と呟くように言う。
「ママとパパは?」
不安な声で、結希がもう1度問う。
「パパとママは…
事故に遭って…覚えてないのね…事故だったのよ…。
結希ちゃんも、その事故に巻き込まれて…ショックで記憶を失くしたの…。
でも、心配しなくていいからね。
叔母さんがついてるから。」
【事故】
その言葉さえも結希は覚えていない。
結希は叔母の言葉に首を横に振り、若干12歳にして1人…独りで生きて行く事を決めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます