第16話
「落ちついて! クズハが大変なのは良く分かったけど、私もこの状況のままは困る。クズハだって結婚式から逃げてきたなら、何時までもこのままってわけにはいかないでしょう?」
咳込む北木の背中を摩りながら、クズハに問うと吊り上った目元が潤み両手で顔を覆うと泣き出した。
泣きたい気持ちは、分からなくはないのだが絵里も咳込んでいた北木すらも息を飲んだ。
――大の男が泣く姿って、悪いけど引く。
絵里は慰めるにも言葉が見つからないほどに引いてしまっていると、自分の姿に見かねたのか北木が声を掛けた。
「少し落ち着くまでは譲歩しよう……だから、姿を戻すと約束してくれ」
オイオイと泣いていたクズハは北木の言葉にパッと顔を上げ、何かを思いついたように目を輝かせる。
――嘘泣きか!?
クズハの様子に戸惑っていると、言葉を無くしたまま立っている絵里に怪しく微笑みクズハがにじり寄る。
「いいこと思いついた……」
クズハは絵里の顎を左手で持ち上げて顔を近づけ妖艶に微笑む。唖然として身を固くしたままの絵里の頬に右手の人差し指をそっと乗せる。
「この男の見た目は嫌いじゃないだろう? 絵里が死ぬまで伴侶として心身共に満足させてやる」
「あっ、いや……その……」
北木の容姿は悪くない。急に口調を変えて男の色気を漂わせて迫られれば、大体の女は顔を赤くして戸惑うだろう。
絵里も例外ではなく見つめられたまま、頬から顎のラインをなぞり下りてくる指先に生唾を飲み込む。
喉元から指先がブラウスのボタンに差し掛かると、勝手にボタンが外れ胸元が開いていく。
――こ、このエロ狐なにしてくれてんのよ!
顔を赤くして頭では抵抗しようとしている絵里だったが、体が思うように動かせない。
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