第4話
(一里塚耕助狐)
大和の狐が松原で子を産み春になって大和へ帰るとき親離れしていた耕介を三宅の一里塚へ置いて帰ったのではないかと言われてる。
耕助は言葉が話せず結婚をしなかったので子供もいなかった。
一里塚で生活をするようになって3年、長雨が続き一里塚の川の方から赤ちゃんの鳴き声がした。
耕助は大和川に飛び込み竹籠の中に寝かされている赤ちゃんを籠と一緒に引き上げて土手に上がってきた。
昔は大水になると赤ちゃんが良く川上から流される事は良く有り誰も皆、惨いことよと流されて行く赤ちゃんを見送った。
村人は早く赤ちゃんを川に流してやれと籠を取り上げようとしたが耕介はケーンケーンウーと恐ろしい血相で睨み付けた。
赤ちゃんは既に死んでいたが放そうとしてもできない。
村人は城連寺の神さん(シャーマン・狐おろし)に相談した。
神さんが訪れると耕介は表に手をついて座って待っていた。
狐は礼儀正しいし綺麗好きで人間に好かれていた。
耕助は今日は○○の日です。きっと来て下さると思っていました。
籠の赤ちゃんを神さんに差出した。
神さんは良くお気づき下さいましたと祭壇を作って赤ちゃんを据え置いた。
神さんが耕助と話を始めた。
耕助は赤ちゃんが入っている籠から、お稲荷さんの守り袋を出して大きな涙を落とした。守り袋でいたわるように全身をさすり続けている。
親は冥土にたどり着けるように赤子に付けてやったと思うが親はどんなに辛くても子の手を離したらあかん。
子は自分の食いぶちを持って生まれてくると昔から言われとる。どんな事があっても親の手子の手を離しなや。人間ならなおさらや。
耕助は親から手を離された狐で親から手を離された子の哀しみや生きることの辛さを体で知っていた。
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