第4話 そして今年もやってくる

一年が経過した四月一日。


聡一はあかりに小さな花束をプレゼントした。


それはオレンジ色の可愛い花々。


『少しは元気になってきて良かった』


そう言い、普段は忘れたフリをしてくれる聡一が優しそうに微笑んだ。


新しい春。


聡一がくれた花束は、あかりの心に灯りを照らした。



◇◇◇◇◇



ゆっくりと育まれるように、聡一への『恋慕』は募る。


仕事に対しての真摯な姿勢。柔らかな表情。


時折、ふとした時に気落ちする。

すると気付けば聡一は傍に居る。


ソファで膝を抱えて座っていると、静かに隣りにやって来て、聡一はあかりの身体に背中をつけて座る。


それ以上の触れ合いなど無い。


その僅かな体温が、じわじわとあかりの身体の中に広がっていくような感覚に陥る。


そうして過ごした二年。


思い出せば多少辛いが、それは既に過ぎ去りし過去になった。


聡一だけが、あかりを癒してくれた。


だから。自立して、自分の足でしっかり立ちたい。


そうする事で、聡一に『あなたが好き』だと告げる事が出来るのでは無いか。


そうあかりは考えた。

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