第3話 忙しくも穏やかな時間

聡一との同居は、ささくれだったあかりの心を少しずつ癒してくれた。


メディエイトでの仕事は忙しく、日中は余計な事を考える暇も無かった。


そして聡一と自宅に戻る。


聡一は僅かな現金を受け取るだけで、ボロボロになったあかりを自宅に置いてくれた。


せめてこれくらいはと、あかりは聡一の自宅の家事を請け負った。


聡一は物静かなタイプで、仕事も黙々と遂行する。


そして自宅でも、気が向いた時に少し話をするくらいで、基本的にあかりは放置されていた。


ただ静かに、あかりの近くに聡一が過ごす。


落ち着きのある、少し低めの声で何気ない会話をする。


ただそこにいる聡一に、不思議と癒された。


たまに自宅で酒を交し、職場の話や移ろう季節の話、話題の映画の話などをする。


聡一はあかりに何も求めなかった。


あかりが請け負った家事ですら、自分の手が空いている時は一緒に行った。


静かに降り積もるのは、小さな『恋慕』。


同情されているだけだと自制しようにも、常に一緒にいるのだ。


抗う事も出来なかった。

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