第2話 上村聡一という男性

二年前の四月一日の出来事は、聡一の手腕が発揮され、瞬く間に解決した。


その要因の一つは、和解した事にあった。


「ガッツリやり込めますよ?」


そう聡一はあかりに言ったが、あかりは首を振った。


もう関わり合いたくなかったのだ。


なので『家族、婚約者との絶縁』と『結婚式の費用を精算する』事を慰謝料として和解したのだ。


それから二年が経過した。


あかりが婚約破棄をした時期、聡一は『独立準備』を行っていた。


そんな彼は、あかりに提案した。


嫌な事を忘れたいなら忙しく動いた方が良いかもしれないと。


聡一は、メディエイトの事務員としてあかりを採用してもらった。


更に、住居も無かったあかりを自分のマンションの一室を与えた。


多少の貯金はあったが、住民票を移す事のリスクを示唆された。


今は『家族』や『元婚約者』と絶縁したが、困った時に押しかけてくるかもしれない。


居住地や勤務先が分からなければ、押しかけようにも出来ないのだ。


これを機会に、事務所を開設しようとしているエリアに引っ越すと、聡一はあかりが止めるのを聞かずに引越しまで敢行した。


聡一は聞いても答えてはくれなかったが、引越しの理由は明らかに『あかり』の為だ。


もちろん、彼が言ったように、独立後の利便性もあるだろう。


しかしそれは独立が確定してからでも良かったはずだ。


そして彼は、あかりのメンタル面でも危惧していた。


誰かに『見張られて』いたほうが良いと。


そこまでされると、あかりは『同居』も逆らえなくなった。


そうして、半ば強引に二人の同居生活は始まった。

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