第7話
ノアの凛とした瞳、口調、発音、立ち振舞いからして良家の女ではないかと思った。
「しかし旅の行商……? にしては荷がないではないか」
「……食べ物や父の医者代を得るために服や靴は売ってしまいました。それが何か?」
「……そうか、それは大変だったな」
ノアは初対面の男にこんな話をしているのが不思議だと思いながら、自分が今着ているものの他に着替えと外套が1枚しか残っていない事に気がついて急に恥ずかしくなった。
「それで歌で小銭を得ていたのか?」
「……左様でございます。明日、髪を売りに行けば残りの医者代もきっと払えるので」
ノアの髪を手にとったルイは言った。
「確かに……美しい上に色も言うことはない髪だ……だがその長さでは丸坊主にしてもパンがひとつ買える程度にしかならんぞ」
「え!」
「これは天然か? 単に癖がついているのか?」
「天然です」
「天使の絵画というところか」
「そ、そんな美しいものではありませんが」
「いや、天使だ」
ノアは驚いた顔をしてルイを見る。
「……せっかくだが、髪を売るなら体を売るんだな」
「し、失礼ですわ!」
「本当の事を言っただけだ」
「……」
「綺麗事で飯が食えるほど甘くはない事ぐらいお前にもわかるであろう。子供でもあるまい」
表情1つ変えることなく言ったルイはしばらくノアを見て、ふうっとため息をついた。
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