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第5話
ルイは代々受け継いだ土地と財で様々なビジネスをしていた。
乳飲み子や幼児を連れてのお茶会やパーティーにナーサリーを雇ったり派遣することで対価を得ていたし、使用人のあっせんなどもやっていた。
町で土地を貸していたり、雑貨を売る店や帽子屋、仕立て屋、理髪店などの経営もやっていたが一番の収入であり裏稼業とでもいうのか娼婦を数人囲っていたりもしたのだ。
無論、ルイが彼女たちと夜を共にすることも食事をすることもなかった。
時折自ら町に赴いて、祖父や父がそうしていたように裏路地で身売りをする女を眺めた。
夜の町には様々な女がいた。
教えてもらったわけではないが、書斎に残されたマニュアルのような日記と幼い頃に数回連れていかれた夜の街の記憶と感性はすばらしいものだった。
そして気に入った女を馬車にのせて屋敷の離れに連れていく。
人さらいだという者もいた。
どこかよその国へ売り飛ばされるんだと言う噂もまことしやかに流れた。
自ら売り込みにドアを叩く女は門前払いを食らう。
ルイが連れて帰る女は、どの女も身寄りのない私生児ばかりで、彼女達が町から姿を消しても誰一人として探す者はないからだった。
「伯爵さまは、女をさらって喰ってるのさ」
「いいや伯爵様は吸血鬼なのさ、女の血を飲まないと死んでしまうんだ」
「どこぞの国の女王様の様に若い娘の血の風呂に入ってるんだ。伯爵様の肌は恐ろしいほど白く美しいじゃないか」
「実はもう何百年も生きてるって噂だぞ」
ルイはそんな噂もどこ吹く風だったし、そうはいいながらも民は皆ルイの事を嫌う様子もないのだった。
屋敷は白い四季咲きのバラが囲み1年中良い香りを漂わせていた。
連れ帰った女は離れの2階建ての屋敷に住まわせ、清潔な環境の個室とドレス、充分な食事を与えお客をとらせた。
お客は貴族や騎士ばかりだった。
それでも、紳士的でない者は二度と女に触れさせることはなかった。
そんな環境だったが故、女たちも逃げ出すものはひとりもいなかった。
公娼は認められてはいたが稼ぎは大してよくもなかったし、見初められると言うこともない。
高級娼婦は非合法であったが、それゆえに見初められれば玉の輿にのることもできた。
ルイが連れてきた女は私生児でありながら美しく頭のよい女ばかりだった。
少し教えれば読み書きができるようになり、言葉使いや身のこなしにも気を使わせた。
もう数人が貴族の本妻や妾に収まっているのだから、彼女たちも喜んで自分磨きに励んだ。
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