第18話
彼女はあの日よりもクールでキリリとした印象だった。
「あの日とは印象が違いますね。眼鏡が違いますか?」
「よくわかったね。あの日の眼鏡じゃなくて、今日はリカコに最悪だって言われた眼鏡をしてるんだ」
「あはは! そう……でも、私はその眼鏡の方がお客様にはお似合いだと思いますよ」
客とバーテンダー。
傍から見ればそんな普通の会話にすぎない。
「この前、キミから出された問題の答え……やっと解ったんだ。回答を聞いてもらえるかな」
彼女は大きく頷いた。
「アイオープナー。それが答えだって言ったら、合格点をくれる?」
どう伝えようかと考えながら電車の中で、店のスタッフが言っていた事を思い出して検索をしてみたのだ。
アイオープナー。というカクテルは『運命の出会い』だ、俺は彼女の瞳をまっすぐに見た。
「粋な答え方。大正解です」
ふふふ、と笑った彼女はラムベースのそのカクテルを作って出した。
「さて、困りましたね」
「?」
「お客様の眼鏡が曇ってない事を証明するのはいつにしましょうか」
俺が楽し気に笑うと、男のバーテンダーが女の子2人連れの前に言って会話を始める。
彼女はそっちをチラリと見て微笑んだ。
「美容師さんって休み決まってるの?」
「明日休み」
「なんて好都合、私も明日はお休み」
「決まりだね」
「意外と強引なのね」
「そう?」
彼女はふふんと鼻を鳴らす。
「答えが解らなかったのか、解っても返事を持って来る気がなかったのかと思っていたところだったわ。酔った男の相手は慣れてるのに、バカみたいだって自嘲してたのよ」
「俺は……ずっとリカさんの事が」
彼女はポケットから名刺を取り出して、裏書きをすると俺に渡した。
「明日は大事なお約束があるのでしょう? 酔わないうちにお帰りになられて、彼女からの電話を待ってらしたほうが」
「……そうだね。これを飲んだら帰るよ」
そう言って俺も鞄の中から名刺を出すと裏書きをして渡す。
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