第17話

「いらっしゃいませ」


入り口の黒服のスタッフが丁寧な礼をする。


いつも仕事に行く時はラフな格好が多いのだが、今日は社員ミーティングがあるからと本社に呼ばれていたおかげで綺麗目な恰好だった。



こういう場所に来ても浮かない格好をしていた事が奇跡だと思いながら中に入ると、男が聞いた。



「お待ち合わせでしょうか?」


「ひとりです。ひとりでも大丈夫ですか?」


「勿論でございます、失礼いたしました。お席の方はご希望などございますか? ソファ席もご用意がございますが、いかがしましょうか?」


「バーテンダーさんのいる方で」


「かしこまりました」



 案内されながらカウンターに座る。



 白いシャツにカマーベスト、黒地に白いドットの艶のあるネクタイをしている彼女が俺に気が付いて目を大きく見開いた。


 カウンターにいたもう一人のバーテンの男が俺の前に来ようとしたのを軽く制してやってくるとペーパーコースターをすっと置いて微笑んだ。



「いらっしゃいませ」

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