第14話

彼女が出ていった後の部屋の中は煙草の匂いと無駄に綺麗な夜景で泣きそうになった。



さっきまで、そこに座っていたはずの彼女はフィルムの中に帰ってしまったのだろうか?


そんな気分になりながら家に帰った。



 翌日も翌々日も平々凡々と仕事をして、変わらない毎日を送る。


やっぱりあれは夢だったんじゃないのか? 


そもそも、彼女自体が幻想で、自分が作りだした妄想だったんじゃないかとさえ思えてきた。



「臼井さん、ここ数日大丈夫ですか?」


「え?」


「うーん、何ていうのかな? 恋煩いみたいな顔してます、あはは」


「恋?」


「そう、なんか。落ち込んでるとも違くて、誰かの事を考えてホヤァっとしてる顔というか。いい人できたんですか?」



俺はドキンとしながらも小さく笑って見せる。


「ないない」


「なんだ。じゃあ、ワタシの勘違いだったかなぁ」


「ねえ。そういえば、彼氏がバーテンやってるって言ったなかったっけ?」


「ああ。もう別れましたけど、やってました。今の彼氏は同業者です」



あっけらかんと言ったスタッフの女の子は俺の次の言葉を待っていた。



「スクリュードライバーの酒言葉ってわかる? 花言葉みたいなのでさ、あるだろ? そういうの?」


「スクリュードライバー……あ。なんだっけ? ええっと……あ!」



手をパンと叩いて言った。

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