第15話

「あなたに心を奪われてしまった。です」


「え」


「シャンディガフって解ります? カクテル」


「ああ。うん」


「あれは、無駄なことって意味だって。彼が。だから、誘いに乗りたくなきゃシャンディガフを頼めって。それとなくバーテンに言えば相手に伝わるって。まぁ、そこらのクラブ辺りのバーテンじゃダメでしょうけど……ちゃんとしたバーのカウンターならって言ってました」


「……」


「それとは逆に、惚れたぞ。ってなったら、スクリュードライバーを頼めって。うん。まあ、私が行くの何てクラブとかが多いんで、使った事もないですけどね。そういう断り方や誘い方って粋だなぁって思ったんでよく覚えてます」



 俺は曖昧に笑った。



仕事上がりの電車を待つホームで『スクリュードライバー、意味』と検索をかける。


なんで、今更かけるんだろうか? 


 最初からこうしていればよかったのだ。リカの事があまりにも非現実的すぎて、この現実世界の便利な文明の利器の存在すら忘れていたのだろう。


と、言い訳をしながら検索結果を目で追う。



「俺、勘違いするよ、いいのかよ」



その結果を見て俺は家に向かう方とは、反対側の電車に乗った。

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