第11話
「リカさんっていくつなの?」
「あら。ダメねえ。これでも一応女なのよ、デリカシーのない質問ね」
「同じぐらいだろうから聞いても平気かなと思ったんだよ」
「ユータロはいくつなの?」
この女の煙草の吸い方は嫌いじゃない。
下品じゃないのだ。
美容師仲間でもストレスのたまる職場だから、煙草を吸う女は多い。
色気があるんだ。彼女の一挙一動は、彩を纏っていた。
「24だよ」
「へえ、もう少し若く見えた。二十歳そこそこかと」
「そう?」
「そうね」
俺は彼女の次の言葉を待っていた、それに気が付いたかのように微笑んだ。
「26よ」
「年上」
「そうね、リカコはいくつなの?」
「28だよ」
「そう」
彼女は煙草を消すとジンバックを飲み干してベルを鳴らした。
「同じ物で……ああ。やっぱり24トニック」
「かしこまりました」
「カクテル詳しいんだ」
ふふふと笑って、していた大きなピアスを外してバッグにしまうとケースから小ぶりのピアスを出してホールに入れた。
「私、ここの店のバーテンなのよ」
「え」
「詳しくなかったらマズイでしょ?」
そういうと、俺のあいたグラスを持って部屋を出ていった。
すっと伸びた背筋が綺麗だった。
細い首筋に不揃いの髪がのっている。
それもまた妙な色気があって、背中の開いたドレスがはえた。
彼女は部屋に戻ってくるとシェイカーを片手に持って、やってきた。
カクテルグラスを俺の前に置くと、綺麗な線を描いてそれを注いだ。
オレンジ色の液体がなみなみと注がれて、最後の一滴が王冠のように面に沈む。
「……」
俺は彼女を見上げた。
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