第10話

「髪を染めてもないしね……昔の洋画に出てくる女優みたいなショートヘアは可愛いを意識してるわけじゃないだろ?」


「そうね……別にかわいいなんて思われなくていいもの、この仕事初めた頃は女がいるのが珍しいのか、勘違いするのか口説いたり触ったりね」


「客商売か、うん、思った通りだ」



彼女は口を手で覆って子供のように肩をすくめた。



「あら。いいヒントを出しちゃった」


「あはは!」


「……でも、昔の洋画に出てくる女優なんて素敵な誉め言葉だわ」


「うん、いいセンスだよ。リカさんの担当の美容師」


「あはは、美容室なんてもう何年も行ってないわよ、お風呂場で自分で切るのよ」


「マジかよ……確かによく見ると、雑だな」


「あはは、そうでしょ? だから、色気がないって言われるのよ」



煙草を消す仕草も全て艶っぽいと思う俺は、眼鏡を買い換えた方がいいのかもしれないと笑う。

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