第9話

「職業病……俺もあるかもな、この人は仕事なにかな? とか、美容室って最初にアンケートみたいなの書いてもらうだろ? でも職業欄ってそんな詳しく書かないからね、会社員っていっても受付と営業じゃ全然違うしね」



「そうね……違うわね。私はどんな仕事をしてるように見える?」


「えー」



ポートレートから抜け出したようなスレンダーな体に、短い髪が良く似合う小さな顔、白い肌に栄える赤い唇。



まじまじと俺が見ると少し恥ずかしそうに笑って見せた。



「そんな風に改めてじっくり見られると……恥ずかしいものね」


「はは! 何かなぁ……でも、そうだな。男と同等の職場だと思う、職種は……うーん何だろうな」



リカは俺を覗き込むようにして頷いた。



「その眼鏡の奥は、節穴じゃないみたいね」


「ははは! なにそれ」


「リカコを見る目はなかったみたいだけど、美容師としては合格ラインなんじゃないの? なんでそう思う?」



俺は煙草を大きく吸い込むと彼女を再びじっと見た。

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