第8話

「すげえな。当たった!」


「ふふふ」


「なんでわかったの?」



 パーマ液や毛染め液の美容室独特の匂いがしたのだろうか? 


いや、今日は出がけにシャワーを浴びて来たし、そんなはずはないんだけど……と、考えながら彼女を見つめる。



「勘」


「勘? すごいな」


「あはは、そんなわけないじゃない」



俺はちょっとムッとして煙を吐き出す。


ウエイターがトレンチの上にグラスを2つ載せてやってきた。



「ありがとう」



リカは立ち上がってそれをトレンチからとると俺に渡し、右手を捕まえた。


「こんな所にタコができるのは美容師ぐらいだもの」


「あ」



 人にもよると思うけど、多数の美容師が薬指にタコが出来ている。



第二関節の丁度上ぐらいに鋏が当たるからだ。



「……すげえ、観察力だな」


「そうね……イヤな癖よね。初対面の人の職業、なんとなく考えたりしちゃうのよね。で、ああ、この人は触れない方がいい職業だなとか……言ってほしいタイプだわ、なんて解ったり」



目の前のソファに再び座ると大きく息をついた。

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