第5話
「俺さぁ、死んじゃおうかなぁと思ってたんだよ」
「何? 随分唐突ね、酔っぱらいの戯言?」
「そうかもなぁ」
ふう。と、煙を吐き出す。
和装の新郎と洋装の新婦が、灯籠があるのにガゼボもある庭で写真を撮っている。
「滑稽ね」
彼女は金色の大きなピアスを揺らして微笑んだ。
「……あそこにいるのは私だと思ってたわ」
「え」
「付き合ってたのはあの子なのよ、私は女友達……ううん、女友達でもなかったのかもね。ただの友達ね」
俺はホテルの売店で買った、無糖の紅茶をガブガブと飲んだ。
「同じだ」
「?」
「俺も、今出てきた結婚式。新婦と付き合ってると思ってたんだけど、勘違いだったみたいで」
「……」
「あの金融眼鏡を紹介された時は、何が何だかわかんなかったよ」
「ふうん。やったのに?」
「え? ああ、うん。やったよ」
彼女はアハハハと笑って俺の隣に腰掛けた。
「見た目、遊んでそうなのにね。ピュアなんだ、かわいいの」
「か。かわいいって」
煙草の煙を吐き出すと、組んだ足の膝頭に肘をついて俺を覗き込む。
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