第6話

美代の発作のような破滅的な発言や行動は落ち着いていた。



私と出会って8年。



彼と付き合って、ちょうど5年が過ぎた頃だった。




 始めこそ互いの首を絞め合うようなキスも逢瀬も、いつからか穏やかな日常を望む静かな愛に変わっていった。



バランスのいい関係だと思って見ていた。




常に綱渡りをしているようなアンバランスな言葉も涙もすっかり現れなくなっていた。



どちらが壊すこともない、どちらが過ぎる事のない、安定した関係のように見えた。



彼もきっとそう思っていたに違いない。



溺愛、激愛だと言いながらも平穏な毎日が流れて行った。



当たり前の日常と言う言葉を美代は好んで使うようになった。





「最後に見た空」


の話は時々出たが、サラリと言うだけで以前の様に掘り下げて思考することはなかった。



だから


みんな安心していたし。


みんな想像していなかった。





美代がいなくなったのは、穏やかなゴールデンウイークの最中だった。

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